きのこのおもしろいお話、ためになるお話を紹介します。
一般的に、「きのこ」と呼ばれるものは「シイタケ」や「マツタケ」などに代表されるような、カサのついた形を想像されると思いますが、それはきのこの「子実体」と呼ばれる生殖活動をするための器官で、植物で言うと「実」や「花」にあたるものです。きのこの本体は「菌糸」と呼ばれる糸状の細胞の集まりで、その多くは、地中や樹中に埋まっていて、その中で成長し、生きています。
菌糸は生殖する時だけカサのついたような形や、その他いろいろな形の「子実体」を土の上や木の上、土の中などいろいろな場所で発生させ、胞子を飛ばし、数を増やします。菌糸は最長で30年〜40年生きていると言われています。
ほとんどのきのこが、人の見えない場所にあるため、まだまだ発見されていないと思います。実は、この地球上地のあらゆるところに、たくさんのきのこがひっそりと生きているのです。
<左写真>菌糸のまとわりついた木の根(菌根)<中絵>このように、地中に菌糸を伸ばしています。木の根に菌糸をのばしているきのこを、菌根菌と言います。(<左写真><中絵>共に「子供の科学★サイエンスブック菌類の世界」よりお借りしました)<右写真>スッポンタケの子実体の下についている菌糸の束(根状菌糸束)
きのこが糸状の生物で、地中や樹中に埋まっている事はさっきも書きましたが、中には地中で長く長く菌糸を伸ばし、複数に枝分かれして、大きさが一山分にもなるきのこもあると言われています。
実はきのこは、地球上で一番大きな生物かもしれないのです。
フェアリーリング(菌輪)は地中で菌糸が放射状に成長して、その先端部分に子実体が発生する事により出来ると言われています。それはそのきのこ1個体がフェアリーリングの大きさだけあると言う事だと思われます。
きのこは大きくは「腐生菌」と「菌根菌」の2種類にわけられます「腐生菌」は木や落ち葉、虫などの他の生物の死骸や糞尿に発生し、消化酵素を出して発生基質(きのこが発生している物質)を分解し、養分を吸収して成長します。残った基質は栄養豊かな土になります。その土にまた植物が生えて、動物が食べ、きのこが分解すると言うように、きのこは生態系にとって、とても大切な生物なのです。
<左写真>落ち葉を分解する腐生菌「アミガサホウライタケ(?)」
落ち葉の白くなっている所が分解されている所です。
<右写真>木を分解する腐生菌「ロクショウグサレキン」
「菌根菌」の方は、主に地上に子実体を発生させますが、地中では木の根と共に、菌根(木の根に菌糸が巻き付いたもの)をつくり、菌根菌は木の根から、木の栄養(光合成産物)を貰い、代わりにきのこが吸収した土の栄養を水分とともに送ります。菌根菌は木と共生しているのです。さらに菌根菌は、水分や養分を樹木に送るだけでなく、菌糸が木の根を毛布のように包み、寒さからも守ります。
このように多くの樹木が菌根菌に助けられ生きています。近年では植樹をする時も菌類と一緒に植え替える方法が開発されています。
きのこはどちらかと言うと木の親のように木の成長を助け、守っているのです。
<写真左>アカマツと共生している菌根菌「ススケヤマドリタケ」
<写真右>モミと共生している巨大な菌根菌「モミタケ」
きのこは昔、「植物」に分類されていました。それが近年、五界説と言う分類になり「植物界」「動物界」「菌界」と言うように、植物とも動物とも違う、別の生物として分類されました。
最新の分類法(8界説)では、生殖細胞の形などから、きのこは「オピストコンタ界」と言うところに分類されていますが、実は「オピストコンタ界」には動物も分類されています。昔は植物とされていたきのこは、現在ではどちらかと言うと動物に近い仲間で、人間
とも親戚のような関係であると言う事がわかりました。
「生命の木(8界説)」 きのこは動物と同じ、オピストコンタ界に分類されています。(この絵は「子供の科学★サイエンスブックス 菌類の世界」よりお借りしています)
「セイヨウショウロ」(トリュフ)に代表される、土の中に子実体をつくるきのこは「地下生菌」と呼ばれています。「地下生菌」にはたくさんの種類があり、色や大きさに違いはありますが、どれも丸形で同じ様な形をしていますが、それぞれすごく遠い仲間のきのこです。それは、もともとぜんぜん違う、様々な菌類が進化し、土にもぐったものだからです。
この地下生菌の多くは、動物に食べられ、胞子が消化されず糞として排出されて数を増やすと言われています。地中は空気中よりも安定した環境で生育しやすく、無造作に胞子をまき散らすより、動物に食べられる方が、効率よく繁殖出来るため、多くのきのこが地下にもぐったと言われています。そのため多くの地下生菌が、動物に発見されやすいように、強い匂いを出していると言われています。
地下生菌は発見されていないものが多く、まだまだ研究が進んでいないので、今ぼくがすごく興味のあるきのこです。
<写真左>地下生菌はこのように、木の根もとなど、落ち葉をかき分けたり、軽く土をはがして探します。
ぼくが見つけたいろいろな地下生菌<写真中>「ウスベニタマタケ」<写真右>「スクレロガステルsp.」
ぼくが見つけたいろいろな地下生菌<写真左>1~2mmの極小きのこ「ステファノスポラsp.(?)」<写真中>「ショウロ属の一種」<写真右>「メラノガステル・ユトリキュラータス」
きのこには毒のあるものがあります。なぜ毒があるのかは、正確にはわかっていませんが、子実体を動物に食べられる事により子孫を増やす種もあることから、別にわざと毒を持っているわけではないと言う説が有力です。タマネギのように、人間は平気で食べられるけど、犬やネコにとっては有毒になるものもあるし、きのこにとって生きて行くのに必要な成分が、偶然人間にとっては毒になると言う事です。
そして、毒きのことそうでないきのこの区別は、いろいろ迷信がありますが、どれも間違っているので一つ一つのきのこを覚えて行くしかないのです。しかも、毒かそうでないかは、誰かが食べてみないとわからないので、食毒不明のきのが大半です。どちらにしても、食べられるとされているきのこも生食だと中毒する事もあるので、きのこは必ず火を通して食べて下さい。
山などを歩いていると、材上などに、きのこに似た、小型の生物を発見する事ができます。それを、きのこ図鑑で調べようと思っても、ほとんどの図鑑にはのっていません。では、きのこではなく、カビなのかな?と思うかもしれませんが、それも違います。それは変形菌(粘菌)と言う生物です。もともとはきのこと同じく菌界に分類されていましたが、今ではきのこなどの菌類と違う、アメーボゾア界に含まれています。
菌類ではありませんが、きのこと一緒に観察を楽しんでみて下さい。
ぼくが見たいろいろな変形菌<写真左>「キウツボホコリ」<写真中>「マメホコリ」<写真右>「ススホコリ」